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東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)37号 判決

一 請求の原因一ないし四の事実は当事者間に争いがない。

二 請求の原因五の1、2、3の各事実も当事者間に争いがなく、この事実によれば、1・3又は3・7―ジメチルキサンチンを原料化合物とする補正第三発明の反応はアルカリ条件下で行われるものであり、この点が原明細書に開示されているとの原告の主張(請求の原因五の4及び5)は正当である。

三 審決は、原発明(3)の方法の原料化合物「テオフイリン又はテオブロミンのアルカリ金属塩」を補正第三発明のように「1・3―又は3・7―ジメチルキサンチン」(前記のとおり1・3―ジメチルキサンチンはテオフイリンの別名であり、3・7―ジメチルキサンチンはテオブロミンの別名である。)と補正することは、前者の原料化合物がアルカリ金属塩だけでなく他の塩基の塩、更には遊離の化合物にまで拡張されたと判断する。しかし、「1・3―ジメチルキサンチンのアルカリ金属塩」(原発明(3)の方法)と「1・3―ジメチルキサンチン」(補正第三発明)の関係についてみると、前者は「1・3―ジメチルキサンチン」をアルカリ金属塩にしたものであり、後者は「1・3―ジメチルキサンチン」そのもの、即ち遊離の化合物であるから、右補正によつて原料化合物が「1・3―ジメチルキサンチン」のアルカリ金属塩及び他の塩基の塩、更には遊離の化合物にまで拡張されたものということはできない。このことは、「3・7―ジメチルキサンチンのアルカリ金属塩」と「3・7―ジメチルキサンチン」との関係についても同様である(この場合は1の位置がアルキル化され、目的化合物が製造されるのである。)。したがつて、審決の前記判断は誤りである。

そして、既に述べたように、補正後の原料化合物である1・3又は3・7―ジメチルキサンチンを使用することが原明細書に開示されているのであるから、本件補正は、原明細書に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を変更したものであり、特許法四一条により原明細書の要旨を変更しないものとみなされる。

四 以上によれば、本件補正が原明細書の要旨を変更するとの審決の判断は誤りであり、かかる誤つた前提のもとに本件特許の出願日が本件補正の時まで繰り下がるとして他の発明と本件発明を対比し、両者が同一であるとの理由で本件特許を無効とした審決は違法なものであつて取消を免れない。

五 よつて、原告の本訴請求を正当として認容する。

〔編註その一〕 原明細書の特許請求の範囲は左のとおりである。

夫々次式

<省略>及び<省略>

(式中Aは三個ないし六個の炭素原子を含むアルキレン基を表わし、Bは二個ないし五個の炭素原子を含むアルキレン基を表わし、これらアルキレン基の為にケトン基は二個ないし五個の炭素原子によりサキンチン核から距てられて位置する)の7―〔(ω―1)―オキソアルキル〕―1・3―ジメチルキサンチン(Ⅰ)及び1―〔(ω―1)―オキソアルキル〕―3・7―ジメチルキサンチン(Ⅱ)の製造に当つて、高められた温度に於て

(1) テオフイリン又はテイオブロミンにアルカリ溶媒中に於て次式

<省略>

(式中テオフイリンと反応せしめる場合にRは最高四個迄の炭素原子を含む直線状アルキル基を、又 テオブロミンと反応せしめる場合にはRは最高三個迄の炭素原子を含む直鎖状アルキル基を表わす)のα、β―不飽和メチルケトンと反応せしめるか、又は

(2) 1―〔(ω―1)オキソアルキル〕―3・7―ジメチルキサンチンを製造する場合にはテオブロミンに水性有機溶媒中でアルキル基が一個或いは又二個の炭素原子を含むアルキル基であるβ―ジアルキルアミノエチルーメチル―ケトンを反応せしめるか、又は

(3) テオフイリン又はテオブロミンのアルカリ金属塩に、テオフイリンの場合には次式

<省略>

(式中Aは上記に定義した如き意味を有し、Halは臭素原子又は塩素原子を意味す)の(ω―1)―オキソアルキルハライドを、テオブロミンの場合には次式

<省略>

(式中B及びHalは上記に定義した如く意味す)の(ω―1)―オキソアルキルハライドを反応せしめ、又これ等の場合殊に(5´―オキソヘキシル)―ジメチルキサンチンの製造の目的の為にはそれに必要である(ω―1)―オキソアルキルハライドは1・3―ジハロゲンプロパン(ここにハロゲンは臭素又は塩素原子を意味する)に九〇%以上の濃度のアルコール及び最少二モルの炭酸カリウムの存在下、六〇ないし一一〇度Cの温度範囲に於てアセト酢酸エステルを反応せしめて2―メチル―3―カルボエトオキシージヒドロピランを生成せしめ、このジヒドロピランに最少二モルの塩化水素又は臭化水素を反応せしめてⅩⅠ―ハロゲンヘキサノン―5(ここにハロゲンは臭素又は塩素原子を意味する)を製造し以後上記の如く反応せしめるか、又は

(4) 夫々次式

<省略>又は<省略>

(式中Xは二個ないし五個の炭素原子を含むアルキレン基を意味し、Yは二個ないし四個の炭素原子を含むアルキレン基を表わし、Halは上記に定義した如く意味す)の7―(ω―ハロアルキル)―1・3―ジメチルキサンチン(Ⅲ)又は1―(ω―ハロアルキル)―3・7―ジメチルキサンチン(Ⅳ)にアセト酢酸エステルのアルカリ塩と作用せしめてからケトン分解を行なうことを特徴とする夫々上記(Ⅰ)又は(Ⅱ)式(式中の記号は上記に定義した如く意味す)の7―〔(ωー1)―オキソアルキル〕―1・3ジメチルキサンチン(Ⅰ)及び1―〔(ω―1)オキソアルキル〕―3・7―ジメチルキサンチン(Ⅱ)の製造方法。

〔編註その二〕 昭和四二年九月二二日付手続補正書による特許請求の範囲は左のとおりである。

1 高められた温度に於いて1・3―又は3・7―ジメチルキサンチン化合物に次式

<省略>

(但し、式中Rはテオフイリンと反応せしめる場合は最大四個までの炭素原子を有する直鎖状アルキル基を示し、テイオブロミンと反応せしめる場合は最高三個までの炭素原子を有する直鎖状アルキル基を示す)のα・β―不飽和メチルケトンを反応せしめて次式

<省略>又は<省略>

(但し式中Aは三ないし六個の炭素原子を含むアルキレン基を示し、Bは二ないし五個の炭素原子を含むアルキレン基を示す)の化合物を生成せしめることを特徴とするキサンチン核から少なくとも二個の炭素原子によつて隔離されたケト基を有する〔(ω―1)―オキソアルキル〕―置換ジメチルキサンチンの製法。

2 高められた温度に於いてテイオブロミンにアルキル基として一ないし二個の炭素原子を含むものを有するα・β―ジアルキルアミノエチルメチルケトンを水性有機溶媒中で反応させ置換3・7―ジメチルキサンを生成せしめることを特徴とする1―(3´―オキソブチル)―3・7―ジメチルキサンチンの製法。

3 1・3―又は3・7―ジメチルキサンチンにケトン化合物を反応せしめるに際して、テオフイリンと反応せしめる場合には次式

<省略>

(但し、式中Aは三ないし六個の炭素原子を含むアルキレン基を示し、Halは臭素又は塩素原子を示す)の(ω―1)―オキソアルキルハライドを、テイオブロミンと反応せしめる場合には次式

<省略>

(但し、式中Bは二ないし五個の炭素原子を含むアルキレン基を示し、Halは上記定義した如く意味す)の(ω―1)―オキソアルキルハライドを高められた温度に於て反応せしめ、及び上記オキソアルキルハライドは1・3―ジハロプロパン(ハロゲンは塩素又は臭素原子を意味する)にアセト酢酸エステルを最低濃度が九〇%のアルコール及び少なくとも二モルの炭酸水素カリウムの存在下六〇ないし一一〇度Cに於て反応せしめて2―メチル―3―カルベトキシ―ジヒドロピランを形成せしめ、生成したピランを少なくとも二モルのハロゲン化水素(ハロゲンは塩基又は臭素原子を示す)と反応せしめてⅩⅠ―ハローヘキサノン―5を形成せしめることにより製造し、次式

<省略>又は<省略>

(但し、式中Aは三ないし六個の炭素原子を含むアルキレン基を示し、Bは二ないし五個の炭素原子を含むアルキレン基を示す)の化合物を生成せしめることを特徴とするキサンチン核から少なくとも二個の炭素原子により隔離されたケト基を有する〔(ω―1)―オキソアルキル〕―置換ジメチルキサンチンの製法。

4 高められた温度に於いてアセト酢酸エステルを次式

<省略>又は<省略>

(但し、式中Xは二ないし五個の炭素原子を含むアルキレン基を示し、Yは二ないし四個の炭素原子を含むアルキレン基を示しHalは塩素又は臭素原子を示す)の1―(ω―ハロアルキル)―3・7―又は7―(ω―ハロアルキル)―1・3―ジメチルキサンチンと反応せしめて下記のA及びBが夫々少なくとも三個の炭素原子を有するものである化合物を生成せしめ次いでここに生成した化合物をケトン分解して次式

<省略>又は<省略>

(但し、式中Aは三ないし六個の炭素原子を含むアルキレン基を示し、Bは三ないし五個の炭素原子を含むアルキレン基を示す)の化合物を生成せしめることを特徴とするキサンチン核から少なくとも二個の炭素原子により隔離されたケト基を有する〔(ω―1)オキソアルキル〕―置換ジメチルキサンチンの製法。

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